【ベトナム・労務】労働法改正の議論状況について(3)2017年4月の新草案 | 弁護士西遊記〜ベトナム、ミャンマー、ときどき中国。
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【ベトナム・労務】労働法改正の議論状況について(3)2017年4月の新草案

労働法改正の新草案

 

さて、以前以下のような労働法の草案の重要点について解説しましたが、新しく4月に草案が出ており、一部変更がありましたので簡単に触れたいと思います。

<目次>

労働法改正の議論状況について(1) 

 1.労働者が労働契約を一方的に解除する権利
 2.年金の支給を受ける条件を満たす労働者との労働契約の解除
 3.最低賃金の増額

労働法改正の議論状況について(2)

 4.残業時間の上限の引き上げ
 5.定年退職年齢の引き上げ

 

残業時間の上限の引き上げ(新草案)


残業時間については、前回の草案ですと上限が600時間の案が出されていました。

(現行法は原則200時間、特別な場合でも300時間)

しかし、今回の草案では、400時間/年が上限とされており、前回の草案よりも上限時間が下がりました。

 

一方で、時間外労働が連続5日を超えないという規定が削除されました。

 

【現行労働法】 第106条 時間外労働
1.時間外労働とは、法律、労働協約または就業規則に規定する通常の勤務時間以外の時間に就労することをいう。
2.使用者は、次の条件を十全に満たしている際に、労働者に時間外労働をさせることができる。
a)労働者の同意を得ること。
b)労働者の時間外労働の時間数は、1日の通常勤務時間の50%を超えてはならず、週当たり勤務時間の規定を適用している場合、通常勤務時間と時間外労働の総時間数は1日につき12時間、1ヶ月につき30時間、1年につき200時間を超えてはならない。ただし、政府が規定する特別な場合は、1年につき300時間を超えない時間外労働が認められる。
c)1ヶ月の間に時間外労働に従事する日が連続した場合、使用者は労働者が休めなかった期間の代休を取得できるように配置しなければならない。

 

 

定年退職年齢の引き上げ(新草案)


現行法に基づくと、通常の労働条件における労働者の定年退職年齢は男性60歳と女性55歳です(労働法187条第1項)。

 

これに関しては旧草案で2つの選択肢が提案されていました。1つは、定年退職年齢を男性60歳と女性55歳の現状のままとするもの。もう1つは、男性の定年退職年齢を60歳から62歳に引き上げ、女性の定年退職年齢を55歳から60歳に引き上げるというものです。

 

今回の草案では、2つの選択肢を維持しつつ、定年退職年齢を上げる選択肢について、2021年1月1日から退職年齢の引き上げを適用するとしました。もっとも、2021年から通常の労働条件で勤務する労働者は、毎年6ヶ月定年退職年齢を延長することとされ、前回草案の毎年3ヶ月の延長よりも早まりました。

 

【現行労働法】 第187条 定年退職の年齢
1.社会保険に関する法律の規定に基づき、社会保険加入期間の条件を満たしている満60歳の男性と満55歳の女性の労働者は、定年後の年金の支給を受けることができる。
2.労働能力が低下した労働者、政府が規定するリストに記載されている非常に重労働・有害な業務・危険な業務、重労働・有害な業務・危険な業務、高地・僻地・国境・島嶼での業務に従事した労働者は、本条第1項の規定より低い年齢で、定年退職することができる。
3.技術の専門レベルが高い労働者、管理業務を行う労働者、その他特別な場合は、本条第1項の規定より高い年齢で定年退職することができる。ただし、超過年数は5年を超えないものとする。
4.本条第2項および第3項の詳細については、政府が規定する。

 

 

残業代の計算方法について(新草案)

 

また、残業代の計算方法について、現行法よりも割増率が一部上がっています。

現行法でも日本より残業代の比率は高くなっているため、どのように改正されるか注目されます。

 

【草案】<選択肢1>

基本的には現行規定(労働法第97条)と同じですが、深夜労働を行った労働者に対しての割増率を上げる内容になっています。

 

第73条 時間外労働、深夜労働の賃金
労働者が時間外労働を行った場合、標準労働時間の賃金に従って計算される賃金が支払われるものとする。計算方法は以下の通りである。
a)通常勤務日の時間外労働の場合は、少なくとも150%とする。
b)週休日の時間外労働の場合は、少なくとも200%とする。
c)祝日または有給休暇の時間外労働の場合は、少なくとも300%とする。
2.深夜労働を行った労働者に対しては、毎時間が少なくとも昼間の標準労働時間の30%追加的に支払われるものとする。
3.深夜に時間外労働を行った労働者に対しては、本条第1項の規定に基づく賃金以外に、毎時間少なくとも昼間の標準労働時間の50%分追加で支払われるものとする。

 

【草案】<選択肢2>

これに対して選択肢2では、最初の数時間以降の時間外労働について、割増率を上げています。


第73条 時間外労働、深夜労働の賃金
労働者が時間外労働を行った場合、標準労働時間の賃金に従って計算される賃金が支払われるものとする。計算方法は以下の通りである。
a)通常勤務日の時間外労働の場合は、最初の残業の1時間が少なくとも150%、次の残業時間が200%とする。
b)週休日の時間外労働の場合は、最初の2時間が少なくとも200%、次の残業時間が300%とする。
c)祝日または有給休暇の時間外労働の場合は、最初の2時間が少なくとも300%、次の残業時間が400%とする。
2.深夜労働を行った労働者に対しては、毎時間が少なくとも昼間の標準労働時間の30%追加的に支払われるものとする。
3.深夜に時間外労働を行った労働者に対しては、本条第1項の規定に基づく賃金以外に、毎時間が少なくとも昼間の標準労働時間の50%分追加で支払われるものとする。

 

【現行労働法】 第97条 時間外労働、深夜労働の賃金
1.労働者が時間外労働を行った場合、以下の割増率で割増賃金が支払われるものとする。
a)通常勤務日の時間外労働の場合は、少なくとも150%とする。
b)週休日の時間外労働の場合は、少なくとも200%とする。
c)祝日または有給休暇の時間外労働の場合は、少なくとも300%とする。日給の労働者に対しては、それに加えて祝日または有給休暇日の賃金を支払う。
2.深夜労働を行った労働者に対しては、少なくとも通常の賃金に基づいて算出される賃金の30%に相当する割増賃金が支払われるものとする。
3.深夜に時間外労働を行った労働者に対しては、本条第1項、第2項の規定に基づく賃金以外に、昼間の賃金に基づいて算出される賃金の20%に相当する割増賃金が支払われるものとする。

 

今後の議論で重要な部分に修正がある場合には、随時アップデートします。

 

 

 

■筆者: 工藤拓人■-----------------------------------------------------------------
弁護士法人キャスト ホーチミン支店 代表弁護士 kudo@cast-law.com
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