【ベトナム・労務】労働法改正の議論状況について(2) | 弁護士西遊記〜ベトナム、ミャンマー、ときどき中国。
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【ベトナム・労務】労働法改正の議論状況について(2)

労働法改正の議論状況

 

*ベトナム法務【目次】

 

前回の続きです。

 

<目次>

労働法改正の議論状況について(1) 

 1.労働者が労働契約を一方的に解除する権利
2.年金の支給を受ける条件を満たす労働者との労働契約の解除
3.最低賃金の増額

労働法改正の議論状況について(2)→本記事 

 4.残業時間の上限の引き上げ
5.定年退職年齢の引き上げ

 

4.残業時間の上限の引き上げ


現時点で日系企業に最も注目されているのは時間外労働時間(残業時間)の引き上げだと思われます。現行労働法に規定される最高の残業時間は1ヶ月で30時間、1年で200時間を超えてはならないというものです。ただし、法律に定められる特別な場合は、申請によって1年で300時間までに延長が可能です(労働法第106条第2項)。
しかしながら、この残業時間規制は他国に比べても非常に短く、実務上達成困難であるとして従来批判されていました。
この点、労働法の改正案は以下のように残業時間の上限を引き上げる選択肢2つを提示しています。

 

<選択肢1>
労働者の通常勤務時間と残業時間は1日で12時間、時間外労働の日が多く連続した場合においても5日連続を超えてはならない。また、労働者の時間外労働の総時間数が1年で600時間を超えてもならない。

 

​<選択肢2>
労働者の通常勤務時間と残業時間は1日で12時間、時間外労働の日が多く連続した場合においても5日連続を超えてはならない。

 このように、現時点において上限の撤廃(選択肢2)と上限600時間(選択肢1、現在の3倍)が提案されていますので、上限の大幅な緩和が予想されています。

 

【現行労働法】 第106条 時間外労働
1.時間外労働とは、法律、労働協約または就業規則に規定する通常の勤務時間以外の時間に就労することをいう。
2.使用者は、次の条件を十全に満たしている際に、労働者に時間外労働をさせることができる。
a)労働者の同意を得ること。
b)労働者の時間外労働の時間数は、1日の通常勤務時間の50%を超えてはならず、週当たり勤務時間の規定を適用している場合、通常勤務時間と時間外労働の総時間数は1日につき12時間、1ヶ月につき30時間、1年につき200時間を超えてはならない。ただし、政府が規定する特別な場合は、1年につき300時間を超えない時間外労働が認められる。
c)1ヶ月の間に時間外労働に従事する日が連続した場合、使用者は労働者が休めなかった期間の代休を取得できるように配置しなければならない。

 

 

5.定年退職年齢の引き上げ


現行法に基づくと、通常の労働条件における労働者の定年退職年齢は男性60歳と女性55歳です(労働法187条第1項)。定年退職年齢の引き上げることは社会的に大きな影響があるため、これまでも法律の改正過程で何度も提案されていますが、多くの反対意見も出ているようです。


これに関しては2つの選択肢が提案されています。1つは、定年退職年齢を男性60歳と女性55歳の現状のままとするもの。もう1つは、男性の定年退職年齢を60歳から62歳に引き上げ、女性の定年退職年齢を55歳から60歳に引き上げるというものです。この場合、配置及び雇用に影響を与えないように毎年3ヶ月ずつ引き上げていくものとされています。

 

【現行労働法】 第187条 定年退職の年齢
1.社会保険に関する法律の規定に基づき、社会保険加入期間の条件を満たしている満60歳の男性と満55歳の女性の労働者は、定年後の年金の支給を受けることができる。
2.労働能力が低下した労働者、政府が規定するリストに記載されている非常に重労働・有害な業務・危険な業務、重労働・有害な業務・危険な業務、高地・僻地・国境・島嶼での業務に従事した労働者は、本条第1項の規定より低い年齢で、定年退職することができる。
3.技術の専門レベルが高い労働者、管理業務を行う労働者、その他特別な場合は、本条第1項の規定より高い年齢で定年退職することができる。ただし、超過年数は5年を超えないものとする。
4.本条第2項および第3項の詳細については、政府が規定する。

 

ベトナム語報道等で特に注目されている点を上述しましたが、この他にも細かい条文の変更が多数予定されています。今後も草案の議論の過程で内容が変化していくと予想されるため、情報を更新していきます。

 

■筆者: 工藤拓人■-----------------------------------------------------------------
弁護士法人キャスト ホーチミン支店 代表弁護士 kudo@cast-law.com
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