【ベトナム・労務】労働法改正の議論状況について(1) | 弁護士西遊記〜ベトナム、ミャンマー、ときどき中国。
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【ベトナム・労務】労働法改正の議論状況について(1)

労働法改正の議論状況

 

*ベトナム法務【目次】
現在、労働法(10/2012/QH-13、2013年5月1日施行。)の改正が議論されており、2017年または2018年中の施行が検討されています。まだ、議論中の草案段階のため、国会の通過までに変更される可能性もありますが、改正が予定される重要なポイントを解説します。

2回に分けて掲載します。

 

<目次>

労働法改正の議論状況について(1)→本記事 

 1.労働者が労働契約を一方的に解除する権利
 2.年金の支給を受ける条件を満たす労働者との労働契約の解除
 3.最低賃金の増額

労働法改正の議論状況について(2)

 4.残業時間の上限の引き上げ
 5.定年退職年齢の引き上げ

 

1.労働者が労働契約を一方的に解除する権利

 

現行労働法の第37条によれば、労働者が同条第1項(a)〜(g)に規定する場合、一定の期間前に使用者に通知すれば、労働契約を一方的に解除することができます。


この規定に関して、上記の規定の内容をそのまま維持したほうがいいという意見がある一方、強制労働の防止及び良好な仕事を選ぶ権利を確保するため、労働者が事前に使用者に通知すれば、いかなる理由であっても労働契約を一方的に解除することができるように、労働法に規定される理由が必要となる規定を削除したほうがいいという意見があり、議論されています。

 

【現行労働法】 第37条 労働者が労働契約を一方的に解除する権利
1.有期限労働契約、季節的な業務または12ヶ月未満の特定業務を履行するための労働契約の下で就労する労働者は、次の場合に契約を契約期間満了前に一方的に解除することができる。
a)労働契約で合意した業務もしくは勤務地に配置されない、または労働条件が保証されない。
b)労働契約に定めた給与が十分に支給されない、または支給が遅延する。
c)虐待、セクシャルハラスメントを受ける、強制労働をさせられる。
d)自身または家族が困難な状況に陥り、契約履行の継続が不可能になる。
e)住民関連機関における専従職に選出される、または国家機関の職務に任命される。
f)妊娠中の女性従業員が、認可を受けている医療機関の指示により、業務を休止せざるを得ない。
g)労働者が疾病または事故にあったものの、有期限労働契約の場合は90日間、季節的業務または12ヶ月未満の特定業務を履行する労働契約の場合は契約期間の1/4を治療に充てたにも関わらず、労働能力を回復できない。
2.本条第1項に基づいて労働契約を一方的に解除する労働者は、使用者に対し、次の期間をもって事前通知しなければならない。
a)本条第1項第a、b、c、g号の場合は、少なくとも3営業日前とする。
b)本条第1項dおよびeの場合、有期限労働契約については少なくとも30日前、季節的業務または12ヶ月未満の特定業務を履行するための労働契約については少なくとも3営業日前とする。
c)本条第1項第f号の場合、事前通知期限は本法第156条の規定によるものとする。
3.無期限労働契約の下で就労する労働者は、本法第156条に規定する場合を除き、労働契約を一方的に解除できるが、使用者に対し少なくとも45日前に事前通知しなければならない。

 

 

2.年金の支給を受ける条件を満たす労働者との労働契約の解除

 

現行労働法第36条第4項に基づき、労働者が社会保険の加入期間および定年退職の年齢に関する条件を十分に満たしている時、労働契約を解除することができます。しかし、実際は、労働者が定年年齢に到達したものの、社会保険の加入期間に関する条件いまだ満たしておらず、企業がその労働者と労働契約を解除できないことが多いです。そのため、本規定の改正が何度も提案されてきました。

 

これに基づき、草案においては、定年退職について現状の規定・条件が維持されているものの、労働者が定年退職年齢に到達した時、使用者が労働契約を一方的に解除する権利が追加されています。

 

【現行労働法】第36条 労働契約を解除する場合
4.労働者が、本法第187条の規定に定める社会保険の加入期間および定年退職の年齢に関する条件を十分に満たしている。

 

 

3.最低賃金の増額


現行労働法に基づき、最低賃金は労働者およびその家族の最低限の生活需要を保証できるように設定されたものと規定されます(労働法第91上第1項)。しかし、実際は最低限の生活需要を確定することは難しく、現在の最低賃金も労働者及びその家族の最低限の生活需要を応答することができないという批判がなされていました。

 

労働法の改正草案の作成過程において、最低限の生活需要の確保のために最低賃金の規定を改正することが提案され、また、国家賃金評議会がそれを判断する根拠として、最低賃金の確定要素を追加することも提案されています。これによって、最低賃金の基準が多要素化することや、最低賃金の上昇傾向が変わる可能性があります。

 

【現行労働法】 第91条 最低賃金
1.最低賃金とは、通常の労働条件で最も単純な業務を行う労働者に支払われる最低の金額であり、且つ労働者およびその家族の最低限の生活需要を保証できるように設定されるものである。
最低賃金は月、日、時間、地域別、産業別により設定される。
2.労働者および労働者の家族の最低限の生活需要、経済社会状況および労働市場での賃金額に基づき、政府は国家賃金評議会の提案に基づいた地域別最低賃金額を公表する。
3.産業別最低賃金額は、産業別団体交渉により設定され、産業別労働協約に記載されるが、政府が公表した地域別最低賃金を下回ってはならない。

 

次回に続きます。

 

■筆者: 工藤拓人■-----------------------------------------------------------------
弁護士法人キャスト ホーチミン支店 代表弁護士 kudo@cast-law.com
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